地磁気の微妙な変化を精密に観測するため、磁性のないように、鉄の代わりに非磁性の銅や真鍮を使用して造られた観測施設群です。コンクリートをはじめとする建築資材も磁性の少ないものを使用しています。
また、磁性の少ない銅板を使用した屋根はきれいな緑青がふいています。
気象庁地磁気観測所では、地磁気等の観測という壮大な役割を担うにも関わらず、観測所内では主に大正期に建造された特殊な洋館での観測が続けられています。データの連続性を保証するために大正期の施設を継続して使用しているのです。
なお、大正元年の創立時の建物は現在(2)の石室のみです。大正12年の関東大震災を契機に、それまで東京から柿岡へ通っての観測から、職員を全員柿岡に移し、観測資料も全てこの柿岡で整理・集計・保管することになって建築されたのが(1)・(3)~(8)の建物です。
(1)本館(第一庁舎)
大正14年(1925)に建てられた左右対称の建物です。正面玄関から筑波山が真正面に見えるように設計されています。赤瓦、明るい壁、アーチ式の入口はスペイン風、窓枠の装飾はフランス風、塔を思わせるような煙突など大正期の息吹を感じさせるモダンなデザインとなっています。
(2)石室
設立時の大正元年(1912)12月に建てられた観測室です。外観からはわかりませんが、花崗岩で造られた「かまぼこ型」の建物で、温度変化を防ぐために全体を土盛りし、当時はこれを覆う形で「萱(カヤ)」による屋根が葺かれていました。これにより室の中は1日に僅か0.1~0.2度程度(1年間でも10度程度)の室温変化に抑えられます。その後、スレート瓦葺きモルタル塗りに改築されて土盛りも当時より縮小されています。
(3)新室
大正14年(1925)8月に建てられた観測室で、磁石の動きを写真記録するために暗室造りです。温度の影響を少なくするために西側と北側にある窓は密封されており、壁も1メートルと厚く設計されています。外からは見えませんが、ひさしの下50センチメートル程の所に8本の真鍮棒がぐるりと廻されていて、地震の揺れ止めとなっています。これは「鉢廻り」と称して、この地方の土蔵や石倉に用いられている特殊な建築様式です。
(4)第二絶対観測室
大正14年(1925)8月に建てられた観測室です。北側には天測(北極星による真方位観測)ができるように細長い窓があり、どの窓も二重になっています。
当初は床板が貼られておらずコンクリート打ちで、内壁の漆喰も厚く塗られていたため、冬の観測はとても寒く辛かったそうです。
(5)実験室
大正13年(1924)5月に各種磁力計の開発試験を行うために建てられた建物で、北側半分は暗室となっています。屋根は非磁性の銅版葺きで、雨樋も銅製です。正面上の室外灯はクチナシの実を模したステンドグラス風で、窓下のタイルや正面両側柱には花模様があるなど、随所に粋なデザインや飾りが見られ、最も大正時代の職人の心意気が感じられる建物です。
(6)空中電気室
地表付近の大気には平均100ボルト/メートルほどの電場がありますが、この電場の変動を観測するため、大正14年(1925)8月に建てられた観測室です。入口のひさしは半円形のデザインになっています。
(7)地磁気観測施設
昭和46年(1971)に国際的な近代観測所として建てられた地磁気観測施設で、屋根や壁には磁性のないアルミニウムが使用され、建物の土台は真鍮筋で建築されています。また、比較較正室(写真右)では空調施設は約40メートル離れた場所に設置しパイプで送風されるなど、徹底的に磁性を排除しています。
磁性の排除は、職員が身に着けている金属類、メガネのねじはもちろん、雨天時に使用する傘は番傘という徹底ぶりです。
建物の中には高性能な磁力計が設置され、地磁気の変化を現在も24時間休まずに精密に測定しています。

(8)正門
昭和3年(1928)6月に造られた観測所の正門です。
二つの大きな御影石の球は地球を模したものです。この御影石は板敷峠を越えた笠間市稲田産で、器械台として磁気儀の置台にも使用されています。
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【気象庁地磁気観測所】
〒315-0116茨城県石岡市柿岡595
電話番号0299-43-1151
ホームページhttp://www.kakioka-jma.go.jp/