地域とともに生きる伝承~代田の大人形~


由来伝承代田の大人形アップ

天明の大飢饉の後、疫病などの災厄がムラに侵入しないように、藁製の大きな人形をムラ境に立てるようになったのが始まりと伝えられていますが、起源等の詳細については不明です。

 かつて大人形作りをやめた際、その年に限って集落の働き手が病気で相次いで亡くなったという伝承があり、それ以来毎年欠かさず大人形が作られているといわれています。

 元々は毎年八月十七日に、各戸の長男で十七歳から三十七歳の若衆によって作られたましたが、現在では若い人たちが少なくなったため、各戸から老若を問わず参加できる男性によって大人形作りが行われています。また、参加者のほとんどがサラリーマンになったことから、今から二十五年程前に、職場での休暇が取りやすい、お盆休みに続く八月十六日に実施日が変更されました。

 この大人形の行事は、代田を含め井関字梶和崎、古酒、長者峰、八木、三村字御前山の六つの集落で行われていましたが、後継者不足、材料不足などの理由により八木、御前山の行事は途絶え、ほかの集落においても存続の危機にあります。

 このようなことから、代田の大人形は現在に残る貴重な民俗行事といえ、平成十六年三月二十五日に石岡市指定無形民俗文化財に指定されました。

 代田の大人形はお盆明けの八月十六日に、全身を杉の葉で覆い恐ろしい形相をした、高さ二メートル程の藁製の大人形をムラ境に立てる行事であり、この大人形は一年を通して据え置かれ、翌年また同じ場所に作りなおされます。

 製作過程と特徴について

(1) 午後三時頃に大人形が置かれている場所に十二、三人の集落の男性が集まり、それまで一年間据え置かれた古い人形を解体し、近くの空き地で燃やします。

(2) 近くの作業小屋に移り、藁で手、足、胸、臍、男根、鉢巻等の部品を作製します。また、竹と杉の若木を削って槍と大刀、小刀を作製します。

 

代田の大人形作成風景1代田の大人形作成風景2

代田の大人形作成風景3桟俵作成風景4

 材料の藁については、八月より前に収穫され、水にも強い小麦藁が大人形に使われていましたが、現在では小麦を作る人がほとんどいなくなってしまったため、材料のすべてに稲藁が使用されるようになりました。しかしながら、その稲藁もコンバインでの稲刈りの普及により入手が困難な状況になってきていることから、当番になった家が前もって、大人形分の稲藁を用意します。

桟俵作成風景 また、胸と臍、刀の鍔、槍の笠にあたる部分を桟俵(俵の蓋になる部分)で表現しますが、その桟俵を上手に編める人が少なくなり、若い世代に伝えていくことが難しくなってきています。

(3) それぞれの部品が完成すると、大人形が置かれていた場所に戻り、地面に立てられた体部の芯となる丸太に藁の束を巻き付け、ひとかかえ程になったら、藁縄でしっかりと縛り付け、六つ目の草刈り籠を被せて頭部の骨組にします。

(4) 足を体部の下両脇に藁縄で縛り付けて固定します。また、手も同様に、頭部の籠に絡ませながら藁縄で縛り付けて固定します。

(5) 竹製の槍を右手の指の間に差し入れながら地面に突き刺し、槍を握るように指を折り曲げて藁縄で縛り固定します。その後、体部の左脇に木製の大刀と小刀を差し込み、槍と同様に大刀を握るように左手の指を折り曲げて藁縄で縛り固定します(写真2)。

(6) 白紙の裏面にマジックで描かれた恐ろしい形相の顔を、ビニールの袋で覆い、草刈り籠に顔を藁縄で縛り付け、その上から鉢巻を巻き付けます。

 かつて顔の部分の材料には、箕、菅笠などが利用されましたが、今ではその姿を見ることさえ難しくなり、現在は紙、ベニヤ板、ブリキ板などが用いられています。また、顔には迫力を出すために、赤や青などの色が使われることがありますが、元々は毛筆による墨黒一色で描かれていたといわれています。

 

代田の大人形作成風景5代田の大人形作成風景6

代田の大人形全身

 (7) 桟俵で表現した胸と臍を、竹串で体部に刺して固定し、中央部に茄子を付けます。また、付け根部分の藁を二股に分けた男根を、体部に渡して固定し、先端が上を向くように地面に刺した竹で支え、先端の中央部に茄子とトウモロコシのひげを付けます。

(8) 藁で作る体部が完成したら、採ってきた杉の枝を小枝に切り分け、全身に杉の小枝を刺していきます。その際、胸や臍が隠れないよう注意し、はみ出した部分はハサミで整えます(詳細は,梶和崎,古酒,長者峰の大人形についてページ動画を参照)。

(9) 最後に注連縄を腹部に回し、余った材料を前の大人形を燃やした場所で同じく処分をし、大人形が完成です(写真4)。

(10) 大人形完成後、その年の当番宅か地区の集会所で、大人形作りの慰労と集落に災厄が入らないことを祈願した酒宴が催され、大人形の行事が終了となります。

 

 

 

 

〔参考文献〕

 茨城県の祭り・行事―茨城県祭り・行事調査報告書― 平成二十年三月 発行 

                                     (木植  繁)

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  • 【更新日】2014年8月20日
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