2月17日(火)
図書館の夢
九州・佐賀県のとある温泉まちに常識をくつがえすような図書館がありました。
365日年中無休で、午前9時から午後9時まで開館し、館内のスターバックスでコーヒーを飲みながら読書することができます。蔦屋(つたや)書店のノウハウを生かしたサービスのもと、雑誌や文具を買うこともできます。
その名も、武雄市図書館。2年前にリニューアルオープンし、その革命的ともいえる運営スタイルを学ぼうと昨年は40万人もの行政視察があったそうです。
蔵書数は20万冊で、この数字は石岡市立中央図書館と変わりないものの、そのすべてが手に取って読めるように棚に並べられています。
この図書館の精神に触れようと、私を含めた県内の市町村長12名が武雄市を訪れました。前日に茨城空港発のスカイマーク便で福岡に降り、1300 年の国指定史跡・鴻臚館(こ うろかん)を視察した後の行程でした。
武雄市は人口5 万人の歴史ある温泉郷で、山々に囲まれた盆地の中にあるまちです。
図書館の周囲は、神社や寺院、自然庭園などがあり、山が近くまで迫っています。
バスを降りて図書館へ近づいていくと、玄関口に就任したばかりの小松政(ただし)市長が出迎えてくれました。
「ようこそ、お出でくださいました」と30代後半の若い市長は、気さくな雰囲気です。
さて、館内を歩いてみると、随所にある読書スペースで熱心に本を読む人たちがいて、この施設がいかに親しまれているかが実感できます。
コーヒーを飲みながらの読書や友人との語らい、児童コーナーでの絵本の読み聞かせなど、ゆったりとした時間にあふれています。
画期的でその優れたコンセプトには、誰もが驚くことでしょう。近年、このスタイルを目指す自治体も増え、この夏には友好都市の多賀城市が同様のスタイルにレストランを加えた図書館をオープンさせる予定です。
▲スタッフが親切,丁寧に説明をしてくれました
視察を終えて、私は石岡の図書館の将来像を改めて考えました。明治22年に創設された図書館は、卓越した志を持っていました。
その特性を生かしながら、図書館が市民の情報源や元気の源として十分に機能するよう英知を集めることが大切でしょう。
今回拝見した郷土資料が、当市のそれよりずっと少なかったことなど、先進地がすべてに優れているとは限りません。
しかし、将来に向けて、図書館の夢が広がった視察であったことには違いありません。「読書尚友」の言葉のように、本を読んで賢人を友とする豊かな暮らしを提供する図書館を目指したいと思いました。
文・写真 今泉 文彦