3月10日(木)
石岡駅にある新旧の顔
石岡市の玄関口であるJR石岡駅が、この3月に多くの関係者の協力の元、新装オープンしました。
新しい駅舎の西口正面には、JR石岡駅の文字の下に「筑波山と霞ヶ浦」の壁画が描かれています。優美な風景の上空に二羽の鶴が舞っています。常陸国風土記に記された鶴の再来なのでしょうか、吉兆ただよう美しい光景です。
つくば万博で活躍したデザイナー・藤代範雄さんの原画を、幅30m×高さ7mのタイル壁面に表現しています。
エスカレーターに乗って改札口へ向かうと、最初に目につくのが東西自由通路の長いガラス面です。そこに4枚の大きなステンドグラスが掛かっていました。
それは「ふるさとの四季」と題した春夏秋冬を描く色鮮やかな「きりえ」で、原作者は日本を代表する、きりえ作家の滝平二郎さんです。
春 つくしんぼ | 夏 バスが行く |
秋 赤とんぼ | 冬 雪がっせん |
滝平さんは平成21年に88歳で亡くなりましたが、その作品は今でも日本中の多くの人々に愛されています。氏は石岡一高卒であり、石岡地方の四季を題材としたと思われる作品が多く、それだけに4枚の絵には親しみがわいてきます。
駅全体には、エレベーターが4基とエスカレーターが8基設置してあり、県内のJR橋上駅では友部駅と並び最も多い設置数です。
時代の趨勢なのでしょうか、水戸以南で大部分の駅が橋上化を進め、残るは高浜、羽鳥、内原の3駅です。高浜駅のバリアーフリー化等は、本年度から構想を練り始めたいと思います。
石岡駅の成り立ちですが、正岡子規が石岡に泊まった6年後の明治28年に、駅は開業しました。
とはいっても、当時は常磐線ではなく、日本鉄道土浦線という私設鉄道でした。
明治34年に磐城線~水戸線~土浦線~隅田川線が一本化され、海岸線と呼ばれたそうです。
常磐線の名はその数年後からで、上野駅までは3時間もかかりました。
前の石岡駅舎は、昭和初めに天皇陛下行幸にあわせ建て替えられました。モダンな建物で、昭和ロマンの雰囲気が漂っていました。
その当時の面影を伝える唯一の物が、改札口の上に掛かる「石岡駅」の扁額です。昭和26年、当時の偉大なジャーナリスト徳富蘇峰が駅長と石岡の知人の要請に応じて書いたものです。
新しい駅にある新旧の顔を、ぜひご覧ください。
文と写真・今泉 文彦