7月8日(土)
根底を見つめ根底から改善する
水戸三の丸ホテルのロビーを歩きながら、数日前に訪れた八戸市で聞いた言葉を思い出していました。「中心街の町名は、表通りとその裏通りで、八日町と朔日町のように足して9になるんです。一桁の日に、そこに市がたったんですね」教えてくれたのは、雪国文化研究室の月舘先生でした。さらに先生は、「青森には、八戸市と三戸町、五戸町、六戸町、七戸町があり、隣接する岩手には一戸町と二戸市、九戸村があります。戸とは、南部氏が馬の管理に設けた行政組織です」と地名の起源にまで触れました。
八戸市を訪れ、この地の広域水道が県を越えて広域連携に取り組んでいたことを知り、不思議に感じていましたが、南部氏の歴史的背景が分かるにつれ、この地域にとっては自然な流れであることが感じられました。
やはり物事は、表層だけでは本質を捉えきれないのでしょう。根底を見つめることの大切さを改めて感じました。
さて、ホテルの上階に上がると、そこは茨城大学人文学部50周年記念の祝賀会場でした。石岡市と茨城大学人文学部とは、4年前から地域連携に関する協定を結び、大学院にも職員が内地留学中です。
さらに様々な分野で大学の支援を受け、筑波大や法政大とも共に手を結び、良好な関係にあります。
「半世紀を迎える人文学部ですが、私にとってはその人文学部の教授の一人と、忘れられない出会いがありました。その人とは、帯刀治名誉教授です」来賓祝辞の中で、私は早々に切り出しました。以下はそのエピソードです。
昭和51年、石岡市の職員となった私は、県の研修センターで1週間ほど集中研修を受けることになりました。その講義の中で、帯刀先生は農山村の嫁不足政策について、バッサリと切り捨てました。「結婚を成立させた仲人さんに、謝礼金10万円を交付するなんて政策は、物事の本質を理解していない。農山村の課題を何一つ解決していないじゃないか。農家に嫁が来ないなら、その問題の根底を探って、課題を一つ一つ解決することです。収入のこと、暮らしの環境のことなど、それらを直視して、根底から改善するのです」その力強い語り口に、私は圧倒されました。何より、論旨が本質をついていたのです。
「根底から改善」の一言に強い感銘を受け、今日までその教えを大切にしています、とまとめると、中程の席にいた帯刀先生は、小さく頷きました。「私も新任職員の講師をやってきたけど、帯刀先生のような影響力を持ちたいわ!」と女性教授が言うと、テーブル周辺は和やかな笑いに包まれました。