11月1日
定礎に込める思い
「定礎箱はどうなった?」と私は庁舎建設の担当者に尋ねました。
「はい、定礎の裏側に設置する予定です」
定礎箱とは、その中に設計図や完成当日の新聞、施工に関する記録などを入れておく、いわば後世へのタイムカプセル。1月4日にオープンする新しい市役所の玄関口壁面に取り付けられます。
私は、新庁舎の耐用年数を、70年と想定しています。一般にコンクリートの寿命は50年~100年で、維持管理経費が増大する後半は建て替え時期と考えているからです。
筑波山をイメージする開放型の庁舎は、市民に開かれた市役所になってほしいと願っています。もちろん、市民サービスを提供する職員にとって使いやすい効率的な執務スペースがあり、分かりやすい雰囲気の議会があり、その上で市民が望む開放的な空間が育まれていくことが理想です。
平成26年8月、新庁舎建設市民懇話会からの提言書には、次のような要望項目がありました。
・周辺環境と調和し、
長く愛される庁舎デザイン
・市民協働スペースの設置
・市民活動の展示スペースを設ける
・年間を通じて様々なイベントを行える庁舎にする
・市民が主体的に敷地内など に花木などを植栽し、それを管理することで愛着がある庁舎とする
これによれば、市民スペースは単に提供されるのではなく、市民自らが参加し作っていくものです。そのためにも、今のうちから環境づくりと機運の醸成が必要でしょう。
もう一つ、新庁舎には絶対必要な確固とした機能があります。それは、市民の安全安心を支える地域防災の拠点としての機能で、それを実現するためには十分な耐震性と独自に電気・水・通信手段を一定期間確保できる能力が求められます。
前の市庁舎は、平成20年の耐震診断で「大地震の衝撃により倒壊または崩壊の危険性が高い」との結果が出ていました。耐震補強改修と建て替えの両面から検討を加え、庁舎整備基金を創設した直後のことでした。
東日本大震災が発生し、庁舎内は阿鼻叫喚の坩堝と化し、3・4階部分は後に使用不能になるほどの被害を受けました。
この苦い教訓を生かして、新庁舎には免震装置や独立電源、情報発信設備を配置しました。このほかにも、バリアフリーや省エネルギー配慮、地元木材を多用した内装、さらには、市民のオープンスペースの実現があります。
70年後に定礎箱を開いたとき、未来の市民が役目を果たした庁舎をどう評価するか。開かれた、市民のための市役所を目指していきたいと思います。
文 今泉 文彦