総面積の約4割が山林の石岡市には,県南で唯一の森林組合,つくばね森林組合があります。ここで森林調査や間伐計画などを行うのは,7年前に東京から移住した清水雅宏さんです。
やっぱり,山には可能性があると思う
戦後復興期の日本では,多くの松,杉,桧が植林されました。市内の山林の半分も,こうした人工林です。しかし,外国産の木材が輸入されるようになると,国産木材の需要が減少し,放置される山林が増加。そこで組合では,茨城県の森林湖沼環境税による補助金を活用し,毎年100ヘクタールほどの山林伐採を実施しています。これは東京ドーム21個ほどの広さです。
「昔は『貯金するなら木を植えろ』と言ったそうですが,木が育ち売れるようになるまでには60年。それも手入れしながらです。『どうしてここに木を植えたんだろう,なぜこの木を残したんだろう,どんな気持ちで植えたんだろう』。山を歩いていると,いろいろと考えさせられます。今,木はお金にならないと言われますが、燃料であり,手間をかければ建材にもなる。やっぱり、山には可能性があると思うんです」
新しい仕事を作ることができる場所
大学時代は工業デザインを専攻し、移住前は店舗什器の設計をしていた清水さん。
「次々とモノを作り出しては処分していくスピードに違和感があったんです。それで7年勤めた会社を辞め、次の道を模索している時に、柿岡にある農場『暮らしの実験室』の企画したツリーハウスをつくるというイベントに参加し、今の仕事に出会いました」
GIS(地理情報システム)を駆使しながら間伐状況の把握を進め、森林施業プランナーの資格も取得し山主に森林経営をアドバイスする一方、林業普及協力員として子どもたちに林業の仕事のやりがいを伝えています。昨年から森林に関心のある仲間で『やさとの森から』という情報交換会も始まりました。
「東京に比べたら、職場の数は少ないからこそ、新しい仕事を作ることができる場所だと思います。やりたいことがどんどん増えているんです」
やさとの森から新たな試みが始まっています。
※この記事は,広報いしおか2018年1月1日号(No.294)の巻末連載「石岡で,はたらくひと Vol.6」を転載したものです。