「都会の喧騒がなく、気疲れしないこと」、四季を感じながらスローライフを満喫
石岡市で生まれ、一度仕事の関係で石岡市を離れ、地域おこし協力隊としてUターン。「茅葺職人としてできる限り長く続けていきたい」と話すのは、佐川元太さん。
都会の喧騒がなく、気疲れしないことが一番うれしい点です。若いころは都会暮らしも良かったですが、年齢とともに自然豊かな土地で四季を感じながら生活できることの有難さを感じるようになりました。以前のサラリーマン生活では一日中室内でパソコンを使って仕事していましたが、現在は自然の中で仕事ができることが楽しいです。
地域おこし協力隊とは、定住に向け、地域で新たな仕事を起こす人材を、地域外から積極的に受け入れ、人口減少・高齢化が進む地方の地域力を維持・強化することを目指すもの。平成21年に総務省が制度化し、全国800以上の自治体で多くの隊員が活躍中です。
移住の理由は「年齢とともに増してきたふるさとへの郷愁」
―佐川さんが移住したきっかけは何ですか?
佐川さん:もともとは石岡市で暮らしていましたが、仕事の関係で県外へ引っ越しました。県外ではサラリーマンをしていましたが、年齢とともに石岡市の昔ながらの風景に懐かしさを感じるようになりました。ちょうどその頃、市の「地域おこし協力隊募集」のお知らせを見て、応募しようと決意しました。
―移住にあたって不安だったことはありますか?
佐川さん:10年以上石岡市を離れていたので、受け入れてもらえるか不安を感じました。しかし、旧知の友人が茅葺職人として働いていたため、その人脈を現在の仕事に活かすことができています。
―実際に石岡市に移住してみた感想を教えてください。
佐川さん:都会の喧騒がなく、気疲れしないことが一番うれしい点です。若いころは都会暮らしも良かったですが、年齢とともに自然豊かな土地で四季を感じながら生活できることの有難さを感じるようになりました。都会では一日中室内でパソコンを使って仕事していましたが、現在は自然の中で仕事ができることが楽しいです。
医療機関やスーパーなど必要なものはひととおりそろっていますし、インフラ的に困っていることはありません。
―現在の仕事の内容を教えてください。
佐川さん:「筑波流」という流派の茅葺き技術の継承と発信を行っています。具体的には、茅葺き職人の指導の下、茅の葺き替え作業を行ったり、日々の取り組みをSNSなどで発信したりしています。研修という制度はなく、現場に出て体で覚えます。職人の技術を目で見て覚えるということも必要です。作業の工程は細かく「今日は縄の縛り方を覚えた」など毎日、達成感を感じることができています。
茅葺きは主にススキと竹を材料としています。植物が材料なので、小さな子どもが生活するにも理想的な住環境ですし、日本の気候にも適した住まいだと思います。使用後の茅を堆肥などに再利用する人もいます。
―これから移住する人へのアドバイスはありますか?
佐川さん:現実的に車と自動車の免許は必要です。石岡市の人はやや口調が強いため、驚くことがあるかもしれませんが、決して怖がる必要はありません。地域の人と打ち解けるためには、まず自分から「話す」ことが大切だと思います。自分の考えや何をしているのかを積極的に伝える努力は必要ですね。
―今後の展望や目標はありますか?
佐川さん:一般的に茅葺職人になるためには10年必要と言われています。地域おこし協力隊の任期は最長で3年なので、その期間に職人になることは難しいかもしれませんが、できる限り長く続けていきたいというのが現在の目標です。
取材を終えて
急な取材の申し入れにも、とびっきりの笑顔で応えてくれた佐川さん。まだ、駆け出しとはいえ茅葺屋根の解体などを煤にまみれながら一生懸命取り組んでいらっしゃる姿がとても印象的でした。伝統的な技法である「筑波流」や茅葺民家という地域資源を守りつつ、自分自身のスローライフや新たな目標を見つけたキラキラした目が、ご自身の明るい未来を見据えているように感じた取材となりました。