至るところで,土が掘り返され,筍の皮だけが残された竹林。「人間がやったんじゃない。これは全部,イノシシが食べた後」と話すのは,鈴木哲夫さん。鳥獣被害対策実施隊の隊長を勤めて30年以上になります。
6月は田畑の被害が多くなる季節。イノシシ以外にもハクビシンやカラスなどの被害もなくなりません。そのため毎年,猟友会の石岡支部と八郷支部の推薦を受けた隊員が,実施帯を結成し,連日,対応に奔走中です。
夜明けとともに
体重70キロを超えるイノシシは,ミミズや野菜,果実を求め,人気のない夜間に田畑を荒らします。朝方,山へと戻るイノシシを捕獲するため,前日に仕掛けておいた罠の見回りから始まる隊員たちの一日。
かかっていれば,互いに連絡を取り合い,現場に集結。しかし,当のイノシシは逃げ出そうと大暴れ。最後まで油断できない緊張の時間の連続です。
長年の経験と勘と,チームワーク
罠の見回りを終えると,猟犬を使った捕獲活動を行います。地面に付いた足跡を追いかけ,隠れ場所の見当をつける「見切り」をして対象エリアを決定します。広大な山中,背丈ほどある藪に潜むイノシシを見つけるのは至難の業。隊長は,長いときには数時間歩いて追跡することもあるといいます。
隊員は隊長の指示のもと,「タツ場」と呼ばれる対象エリアの外周に待機。犬に追い立てられて出てきたイノシシを捕えるため,気配を悟られないように,じっと息を潜めて銃を構えます。
昨年(2016年)の捕獲頭数は,6・9月の2か月で119頭。今年は31名が参加し,会社勤めの傍ら土日を使って活動に参加する隊員もいます。
「農家のため,ここに暮らす人のためのという気持ちが原動力」と話す隊員たちの声には力がこもっていました。6月,いよいよ始動です。
※この記事は,広報いしおか2017年6月1日号(No.280)の巻末連載「石岡で,はたらくひと Vol.1」を転載したものです。