石岡市には,筑波流と呼ばれる茅葺き民家が数多く残っています。この茅屋根の葺き替え技術を継承するために,茅手(かやで)と呼ばれる職人の育成に取り組んでいるのは,常陸風土記の丘。ここで昨年3月から新たに働いているのは,江戸達郎さんです。
仕事を始めて,茅葺き民家を知った
石岡生まれで、小さい頃からおまつりに親しんで育った江戸さん。大学進学をきっかけに県外へ出て、卒業後は営業マンとして働いていました。
茅手の道に入ったのは、同じ町内からおまつりに出ていた今の職場の上司から声を掛けられたのがきっかけだったといいます。
「正直言うと、茅葺き民家は文化財というイメージで、この仕事に就く前は、市内に現役の民家があるということも全く知らなかったんです」
石岡のおまつりで教わったこと
市内の茅葺き民家の多くは、江戸時代に建てられた建物。時代ごとに職人たちが、最善の判断をし、修繕してきた建物には、時の流れに耐え得る技術が詰まっています。
今は、86歳の親方・廣山美佐雄さん、先輩の渡邊大(まさる)さんに付いて現場を回る毎日。
「初めての現場で、地上で茅の下ごしらえや掃除をする地走りをした後『いつまでも下にいたんじゃ仕事を覚えないから』と、2軒目の現場から屋根にあがらせてもらったんです」
最初のうちは、屋根の上の掃除など出来ることを探しながら、仕事の邪魔をしないように働くので精一杯。しかし、マニュアルのない職人の世界の仕事に付いていくことができたのは、おまつりがあったからだといいます。
高校生の頃、山車の上にいる大人たちに憧れ、自分も近づきたいと練習をしたお囃子。この「教えを請い、体で覚える」という経験が、親方や先輩から葺替えを学ぶ際に生きていると話します。
1年かけて一通りの仕事の流れは掴みました。しかし屋根の葺き替えは、10年、20年経ってようやくその真価が分かる仕事です。
「これから親方のように信頼される技術をもった職人になれるように、教えてもらった技術を一つ一つ自分のものにしていきたい」と話します。
※この記事は,広報いしおか2018年2月1日号(No.296)の巻末連載「石岡で,はたらくひと Vol.7」を転載したものです。