7月8日(火)
椿山荘と八溝山
東京の椿山荘庭園は、目映いばかりの緑に包まれていました。雨上がりで木々や植栽が潤いを増し、まるで命の輝きを競いあっているかのようです。
3日前の夕方、ここの大ホールで開催される「茨城県人会」のパーティーに出席するため、私は椿山荘の門をくぐりました。
県人会が始まると、会場は約500人の関係者で埋め尽くされました。都内の経済人や企業の代表者など、東京で活躍する茨城県出身の方々が集い、情報を交換し親睦を深めるのがこの会の主眼なのです。
このチャンスを捉えようと、県内市町村から地場産品をPRする出店が会場の周囲に並んでいます。
石岡市のブースは地酒の試飲コーナーです。
「さすが、酒処! 石岡のお酒は美味しいネ」とお褒めの言葉をいただくと、嬉しいものです。
「各市の市長は壇上に上がってください」とのアナウンスがありました。20人の市長が会場にいて、一人ひとり紹介されました。
そんな市町村長たちの勉強会が、3日後に大子町でありました。研修施設「やみぞ」に集まり、その後廃校となった「旧黒沢中学校」の木造校舎と、県内最高峰の八溝山の山頂を視察する日程です。
旧黒沢中学校は、ふんだんに木材が使われた校舎で、林業で栄えたこの地域の繁栄ぶりが立派な校舎のたたずまいから感じ取れます。まもなく国の登録文化財になるという町の担当者の話でした。
「最後の生徒数は、何人だったのですか?」との問いに 、
「平成24年度で廃校となり、そのときは34人でした」と担当者が答えました。
その瞬間、教室は沈黙に包まれました。総2階建ての大きな校舎は、500人以上収容できる規模の建物です。
その落差に、市町村長は一同に驚き、地域の厳しい人口減少を実感しました。
窓の外には、校庭一杯に太陽光パネルが広がっています。
次に向かったのは、茨城県の最北端にそびえる1千22メートルの八溝山の山頂です。そこには展望台があります。
▲藤井取手市長(中央)と海野那珂市長(右)
「こんなところ、視察でなけりゃ来ることないね」と車中で笠間の山口市長が皆を笑わせます。
「空気が澄んでて、景色が最高の良い所じゃないですか」と私が言うと、
「良い良いと言ってくれても、誰も住み着いてくれない」と地元の益子町長が切り返します。
そこから南方面を望むと、石岡市は遥か山並みの彼方にあり、改めて茨城県の大きさを実感しました。
文・写真 今泉 文彦