1月8日 専門性と汎用性
「舞台は後方からでも足元が見える高さでないと、役に立ちません。特にバレーやダンス、日本舞踊など足捌きが見どころのステージとなると低過ぎては意味がないのです」
新庁舎の多目的ホールの中央部で、ベテラン民謡歌手の由美子さんはそう教えてくれました。この多目的ホールは市民に開放する空間として、さまざまな催し物を通して、広域的な交流や市民連携、情報交換など地域活性化の拠点の一つとなるよう設置したものです。
しかし容れ物は出来たけれども、内容を受け入れる細かな舞台装置や小道具は、グランドオープンの10月までに揃え、正式に市民に開放する予定です。ステージには一定の高さが必要で、音響装置には演奏や歌唱を聞けるパワーと品質が求められ、映像を鑑賞し美術品を展示するには、確実な遮光装置が設置されていることが最低の条件です。
「専門の舞台だったら、市民会館に任せればいいし、ここにそのレベルは要らないわ。あくまでも多目的ホールだから、汎用性のレベルなのよ」
そう総括したのは多くの地域活動を経験してきた比志子さんでした。
多目的ホールは会議や集会ができ、イベントであればミニ演奏会や作品展、落語寄席、スポーツ集会など、 市民が自発的に気軽に楽しみながら開催できるスペースです。様々なことができる万能スペースですが、舞台装置の目測を誤ると何もできない中途半端な空間になりかねません。
「ウイークエンドシアターで映像コンテストの入選作品が上映され、コンサートやアート作品の展示も予定されていて、にぎやかになるね」とは実行委員の一人である信夫さんの言葉です。
多くの市民の知恵と力を得て、新庁舎に魂が次第に吹き込まれていることを日々実感しています。
文 今泉 文彦