5月12日(日)
つくばねの峰から望む里の夏
薫風がそっと肌をなでてゆく心地よい季節です。この日は、八郷ライオンズクラブ創立50周年式典に来賓として出席しました。
会場は国民宿舎つくばねで、そこから見渡す景色は、手前にツツジが咲き誇り、その先にはやさと盆地、龍神山、石岡のまちが広がっています。目の前の素晴らしい光景を眺めていると、慌ただしい公務を忘れてしまいそうです。
いつの間にかゆったりとした気持ちになり、1か月前に私が療養のため入院していた病棟での出来事がよみがえってきました。
病状がほぼ改善し退院を目前にした朝、私は看護師長に提言書を渡しました。
「この素晴らしい医療機関は、さらに飛躍する可能性いっぱいですね」
提言書は、医療体制の水準の高さとその将来性に触れ、同時に重篤な患者さんの目線からの要望を添えました。つまり、意見や要望の言えない患者さんに代わって、回復した私が感謝を込めて代弁したものです。
「国立病院の基本理念には『患者の目線に立つ医療』とあり、またこの医療センターの理念にも『患者本位の医療』とあります。では、患者の目線や気持ちを知るにはどうしていますか」と聞くと、「常に患者さんとの対話から感じ取っています」と看護師長は笑顔で答えました。
私はメモ用紙に2行の文字列を書きました。患者 「患」は心を串刺しにされた人。看護 「看」は手をかざして凝らしてみる人。ここに接点がない限り、医療は患者目線にはならないし、それをできるのが最前線にいる看護師さんだとの思いからのメモでした。
「提言書の意味が、これでわかりました」看護師長は明るい声で言いました。
つくばねから見る風景が、さらに緑を増し鮮やかさに彩られて見えました。
文・今泉文彦