10月5日(土)
素敵な布の壁飾り
市役所の新庁舎玄関口を入ると、自動ドアをくぐった真正面の上部壁面に、白を基調とした布が飾られています。 布の下には投網の錘のような金属が下げられ、この作品「たなばた」の緊張感を印象づけています。
作者は、石岡出身のテキスタイルデザイナー須藤玲子さんで、その深い芸術性は内外で高い評価を得ています。ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館、ビクトリア&アルバート美術館、東京国立近代美術館工芸館等に須藤さんの作品は永久保存され、世界で活躍する女性100人の一人にも選ばれています。
「たなばた」は、木調の壁面の上部にあり、須藤さん自身がこの設置を念入りに行いました。子供たちの願いをしっかりと受け止めて、その未来を輝かしいものにとの思いが作品に込められています。
須藤さんの生まれ育った柿岡の実家は大家族で、そこで一人一人の家族の言葉を大切にしながら、須藤さんは成長していきました。特に暮らしの中に、日本固有の伝統にもとづく技術もありました。日本の精緻な技術に、須藤さんは新しい感性と精神を吹き込んで一連の作品を世に出したのです。
「今の自分があるのは、高校生のとき以来師事している画家の小林恒岳先生との出会いがあったから」と、須藤さんはいいます。小林先生に絵の指導を受けながら、いつしかふるさとの自然に感性が磨かれていきました。
この「たなばた」には、忘れかけている日本人の暮らしの中で培った精神と、豊かな自然とが息づいています。
文・今泉文彦