陣屋門の瓦は,これまでにも何度か葺き替えられてきました。今回の改修でも,瓦は傷みが激しかったため,すべてを交換することになりました。
一口に「瓦」といっても,いろいろな種類があります。
まず,屋根の大棟両側にあるしゃちほこは,現存する最古のもの(制作年代は不明)をモデルに制作しました。担当したのは,滋賀県大津市の美濃邉鬼瓦工房。代表を務める美濃邉惠一氏は,NHKの「プロフェッショナル」でも紹介された,一流の鬼師(鬼瓦職人)です。もちろん,しゃちほこの下にある鬼瓦も,美濃邉鬼瓦工房にお願いしました。
なお,今回の改修では,鬼瓦にあしらう府中松平家の家紋を,「替紋」から「定紋」に改めています。江戸時代,それぞれの家は,公式に用いる「定紋」(「表紋」「本紋」「正紋」などとも言う)のほか,「替紋」(「裏紋」「別紋」「副紋」「控紋」などとも言う)も用いました。府中松平家は,定紋に「隅切角内葵巴紋」,「替紋」に「花葵紋」を用いており,これまでの鬼瓦には「替紋」があしらわれていました。
「替紋」がいつから鬼瓦に用いられていたのか定かでありませんが(明治以降,破損のたびに改修が繰り返されたと思われますが,記録が残っていません),門の顔ともいえる鬼瓦には,一般的に定紋が用いられていることから,今回,「隅切角内葵巴紋」に改めることとしました。
屋根全体に用いられる桟瓦,軒先の軒瓦は,石岡市内で瓦制作を行っている桜井瓦工業が担当。桜井瓦工業の櫻井茂幸氏は,第25回技能コンクール(かわらぶき部門)で内閣総理大臣賞を受けるなど,第一線で活躍している瓦葺師です。
▲隅切角内葵巴紋(定紋) |
▲花葵紋(替紋) |
▲現存する陣屋門最古のしゃちほこ |